新車や中古車を購入したり、点検や車検でお世話になるディーラー。できれば担当営業から好かれて、気持ちよく長く付き合っていきたいものです。
一方で、知らないうちにディーラーに嫌われる客になってしまい、対応がそっけなく感じられたり、良い提案を受けにくくなるケースもあります。
本記事では、現場の営業スタッフの本音を踏まえながら、ディーラーが嫌う傾向にあるお客さまの特徴と具体的なNG行動、そして信頼されるお客さまになるためのポイントを、最新事情も交えて分かりやすく解説します。
目次
ディーラー 嫌われる客とはどんな人か?基本的な考え方
まず押さえておきたいのは、ディーラーが特定の人を感情的に嫌うというより、対応が難しく、結果として距離を置かざるを得ないお客さまがいるということです。
新車販売やアフターサービスの現場では、多くの営業スタッフやサービスアドバイザーが限られた人員と時間で対応しています。その中で、コミュニケーションがスムーズに取れないお客さまは、どうしても優先順位が下がってしまいます。
また、近年は店舗の働き方改革やコンプライアンスも重視されており、過度な値引き交渉や無理な要求には、以前よりはっきりと線引きされるようになっています。ですから、昔の感覚で振る舞うと、知らないうちに嫌われる客になってしまうこともあります。
本章では、ディーラーのビジネスモデルや営業の評価制度といった背景も含め、なぜ一部の客が嫌がられるのか、その基本構造を整理していきます。
ディーラーのビジネスモデルと営業の立場
自動車ディーラーの収益は、新車・中古車販売だけでなく、点検整備や車検、保険、ローンなど多岐にわたります。販売時の利益だけでなく、数年単位で続くメンテナンスや乗り換えまで含めた長期的な関係が重要です。
そのため、単発で大きな値引きだけを求めるお客さまよりも、継続的に利用してくれるお客さまが重視される傾向があります。
また、営業スタッフは月次の販売台数や利益、顧客満足度などで評価されています。限られた時間の中で、多数の商談や納車、アフターフォローをこなさなければならないため、生産性を意識せざるを得ません。
このような背景から、商談がなかなか前に進まない、クレーム対応ばかりが増えるといったケースは、どうしても敬遠されがちになります。
なぜ「嫌われる客」が生まれるのか
嫌われる客が生まれる大きな要因は、ディーラー側とお客さま側の価値観や前提条件のズレです。お客さまは「高い買い物だからこそ、できる限りのわがままを言ってよい」と考えがちですが、ディーラー側は多数の顧客を平等に扱う必要があります。
また、インターネットで得た断片的な情報を絶対視し、現場の事情を理解しないまま要求を押し通そうとするケースも増えています。
相手の立場をまったく考えない一方的な要求や、事実に基づかないクレームなどが重なると、ディーラーとしても「この方の対応は慎重にしよう」と感じざるを得ません。
つまり、多くの場合、嫌われる客は悪意よりもコミュニケーション不足から生まれていると理解することが大切です。
「嫌われる」とどうなるのか
ディーラーに嫌われるといっても、サービスの提供を拒否されたり、露骨にぞんざいな扱いを受けることは基本的にありません。ただし、限られた時間と人員の中で対応しているため、優先順位が下がる形でじわじわと差が出てきます。
例えば、急なトラブル時の入庫枠の確保、人気グレードの在庫情報の共有、値引きやオプション提案の柔軟さなど、目に見えにくい部分で違いが出ることがあります。
また、担当営業が頻繁に変わったり、連絡のレスポンスがやや遅く感じるようになることもあります。ディーラーと長く付き合うほど、この差は積み重なりやすくなります。
逆にいえば、ディーラーにとって付き合いやすい客でいることは、結果的に自分のカーライフ全体の質を高めることにつながるといえるでしょう。
ディーラーが嫌う客の具体的な特徴とNG行動

ディーラーが嫌う客には、いくつか典型的なパターンがあります。ここでは、営業現場でよく話題に上がる代表的な特徴を整理します。
もちろん、ひとつでも当てはまったら即アウトということではありませんが、複数が重なると「この方は正直対応しづらい」と判断されやすくなります。
自分では悪気がないつもりでも、相手から見ると負担が大きい行動になっているケースも多いため、以下のNG行動に心当たりがないか、チェックしてみてください。
改善できるポイントがあれば、それだけでディーラーとの関係性は大きく変わります。
過剰な値引き要求を繰り返す
最も代表的なのが、相場を無視した過剰な値引き要求を何度も繰り返すパターンです。
インターネット上の体験談や、知人から聞いた情報をもとに「このくらいまでは絶対に下がるはず」「他店はもっと安くすると言っている」と主張し、限界を超えたディスカウントを迫るケースが該当します。
営業スタッフにも提示できる条件の上限があり、それを超えた交渉は上司の決裁や本部との調整が必要になるなど、時間的にも心理的にも負担が大きくなります。
さらに、毎回のように大きな値引きを要求するお客さまは、長期的な収益が見込みにくく、店舗としても優先順位を上げにくくなります。
他店の見積もりを使って過度に駆け引きする
複数ディーラーで見積もりを取り、条件比較を行うこと自体はまったく問題ありません。むしろ賢い購入方法といえます。
しかし、他店の見積もりを使って過度な駆け引きをしたり、「今ここでこの金額になれば即決する」と言いながら、さらに違う店舗でその条件を上回る値引きを引き出そうとするなど、行き過ぎた競合のさせ方は嫌われがちです。
営業スタッフからすると、時間をかけて試乗や説明を行い、ようやく上司の了承を得て限界ギリギリの条件を提示したにもかかわらず、最終的に他店で契約されてしまうと、大きなロスになります。
こうしたケースが続くと、次第に「この方は本気度が読みにくい」と判断され、商談にかけるエネルギーが抑えられてしまう可能性があります。
説明を聞かずにクレームや要求だけを繰り返す
最近増えているのが、インターネットや動画の情報を前提に、自分の理解と違う点があるとすぐにクレームにつなげてしまうパターンです。
メーカーの仕様変更や法令の改正、在庫や生産状況など、現場には現場なりの事情がありますが、それを聞く前から「話が違う」「騙された」と感情的になってしまうと、対応する側の心理的負担は大きくなります。
また、電話やメールで頻繁に長文の問い合わせを送り、その都度詳細な回答を求めるケースも、現場としては時間を圧迫されやすくなります。
もちろん正当な要望を伝えること自体は重要ですが、一方的な要求の前に、まず説明をきちんと聞き、理解しようとする姿勢があるかどうかで印象は大きく変わります。
試乗・見積もりだけを繰り返す「冷やかし客」問題

ディーラー現場で特に悩ましいとされるのが、試乗や見積もりを何度も繰り返すものの、購入意欲が極めて低い、いわゆる冷やかし客の存在です。
クルマは高額商品ですから、慎重な検討自体は当然ですが、長期にわたり条件を変えながら見積もりだけを取り続けると、営業側は時間的負担が大きくなります。
本章では、冷やかしと見なされがちな行動パターンと、真剣に検討していることをディーラーに伝えるためのポイントを解説します。
自分はそのつもりがなくても、結果として冷やかし扱いになってしまうケースを避けるための参考にしてください。
買う気がないのに何度も試乗だけする
試乗は、販売店にとって車両の手配や準備、掃除、燃料補給、保険対応など、見えないコストがかかる業務です。
それにもかかわらず、購入の予定がほとんどないまま複数回の試乗を申し込んだり、友人や家族を連れて何台も乗り比べるといった行動は、冷やかしと受け取られやすくなります。
特に、試乗後のヒアリングで予算や購入時期を尋ねられても「まだ全然決めていない」「とりあえず乗ってみたかっただけ」と答えるケースは、次第に営業スタッフの対応も慎重になります。
どうしても興味本位で試乗したい場合は、その旨を正直に伝えたうえで、店舗の混雑具合やタイミングに配慮することが大切です。
複数回の見積もり依頼だけで契約の気配がない
グレードやオプション、支払い方法の違いを比較するために、数パターンの見積もりを依頼するのは一般的です。しかし、毎回条件を大きく変え、数週間から数か月にわたって見積もり更新だけを求め続けると、営業としては「いつまで続くのだろう」と不安になります。
また「他車種も迷っている」「ほかのメーカーも検討している」と言いつつ、具体的な購入時期や予算の目安を示さない場合、商談の優先度は自然と下がっていきます。
本気で検討しているのであれば、「予算はこのくらい」「購入時期は半年以内にしたい」など、ある程度の枠組みを共有することが重要です。
そうすることで、営業側も現実的な提案をしやすくなり、結果的に双方の時間を有効に使うことができます。
冷やかしと誤解されないためのポイント
冷やかしと誤解されないためには、ディーラーに対して「本気度」と「具体性」を伝えることが大切です。
例えば、最初の商談時に、現在のクルマの使用状況や、家族構成、駐車環境、希望する装備などをしっかり共有すると、営業は適切な提案がしやすくなり、無駄な見積もりの往復も減ります。
また、見積もりを依頼する際には「この3パターンを比較したい」「このグレードとあのグレードで悩んでいる」など、明確な検討軸を伝えることも重要です。
さらに、「この条件で納得できればこの時期に契約したい」といった購入意向を示すことで、営業スタッフからも真剣なサポートを受けやすくなります。
態度やマナーで嫌われる客の共通点
価格交渉や見積もりの取り方以上に、ディーラーが気にするのが日常的な態度やマナーです。
金額が大きい買い物だからといって、店員に対して高圧的な態度を取ってよい理由にはなりません。むしろ、こうした場面でのふるまいは、相手に強い印象を残します。
ここでは、営業スタッフやサービスの担当者が内心で「正直つらい」と感じやすい態度やマナーのパターンを整理します。
自覚なく取ってしまいがちな行動も多いため、カーライフ全般での人間関係を良好に保つうえでも参考にしてみてください。
高圧的・命令口調・横柄な態度
もっとも分かりやすく嫌われるのが、高圧的な話し方や命令口調です。
「早くして」「それくらい当然だろう」「店長を呼べ」といった言葉遣いは、スタッフのモチベーションを大きく下げてしまいます。クレームやトラブルの際に感情的になってしまう気持ちは理解できますが、冷静さを欠いた言動はその後の関係悪化を招きます。
また、同席している家族や同僚の前で担当者を強く叱責するような行為も、相手に深いストレスを与えます。
問題があると感じた場合でも、具体的な事実をもとに落ち着いて指摘し、解決策を一緒に考える姿勢を見せるほうが、結果的にスムーズな対応につながります。
約束や時間を守らない・無断キャンセル
商談や点検の予約時間を守らない、連絡なしにキャンセルする、といった行動も、ディーラーにとっては大きな負担です。
営業スタッフは一日のスケジュールを細かく組み立てており、試乗車の手配や整備の順番も含めて事前に準備しています。無断キャンセルや度重なる遅刻は、ほかのお客さまへの対応にも影響が出てしまいます。
やむを得ない事情で時間に遅れそうな場合や日程変更が必要な場合は、分かった時点で早めに連絡を入れることが大切です。
そうした小さな配慮の積み重ねが「このお客さまは信頼できる」という評価につながり、結果的に良いサービスを受けやすくなります。
店舗や車両への配慮が欠けている
ショールームや試乗車は、多くの人が利用する共有の資産です。
店内で大声を出したり、試乗車の扱いが乱暴だったり、子どもが車内を走り回るのを放置するといった行動は、スタッフだけでなく他のお客さまにも迷惑をかけてしまいます。
また、試乗車内での飲食や喫煙は禁止されているケースがほとんどです。規則を無視してしまうと、清掃や修理の手間が発生し、店舗の負担になります。
自分の車以上に丁寧に扱う意識を持つことで、ディーラーからの信頼も高まり、気持ちよく店舗を利用できるようになります。
値引き交渉で嫌われないためのコツ

クルマ購入時の値引き交渉は、多くの方にとって関心が高いテーマです。一方で、そのやり方を誤ると、ディーラーから嫌われる原因にもなります。
本章では、現場の仕組みに沿った、現実的でスマートな交渉のポイントを解説します。
大切なのは、相手の立場も理解したうえで、双方が納得できる落としどころを探ることです。
適切な情報収集と、タイミングを押さえたコミュニケーションができれば、必要以上に関係を悪化させることなく、納得感のある条件を引き出しやすくなります。
相場感を押さえたうえで交渉する
まず重要なのは、購入を検討している車種の値引き相場を大まかに把握しておくことです。
ただし、インターネットや口コミで紹介される金額は、地域差やキャンペーンタイミング、在庫状況などに左右されるため、そのまま自分にも当てはまるとは限りません。
相場情報はあくまで目安とし、実際の店舗では「多くの人がどのくらい値引きされているのか」「この条件でどこまで頑張ってもらえるか」といった聞き方をすると、営業スタッフも説明しやすくなります。
最初から具体的な金額を一方的に提示して迫るよりも、対話を通じて現実的なラインをすり合わせていくほうが、結果的に良い条件に近づきやすい傾向があります。
タイミングと伝え方を意識する
値引き交渉にも、効果的なタイミングがあります。
一般的には、車種選定やグレード、オプションの方向性が決まり、支払総額のイメージが固まりつつある段階で、具体的な数字の話をするのがスムーズです。
その際、「この条件までいけたら契約したい」といった意思表示をセットで伝えると、営業側も社内調整をしやすくなります。
一方、「とにかく一番安くして」「ほかの店よりどれだけ安くできるか次第」といった言い方は、ゴールが見えにくく、営業にとっては判断が難しくなります。交渉の場では、希望と妥協できるラインの両方を自分の中で整理しておくことが大切です。
無理な要求と現実的な相談の違い
無理な要求と、現実的な相談の違いは、「理由」と「代替案」の有無に表れます。
例えば、「ほかの候補車より総額が高くなってしまうので、何とか10万円ほど抑えられないか」「このオプションを外して、代わりにサービスでフロアマットをつけてもらえないか」といった提案は、具体的で検討可能な内容です。
一方、「この金額までいかなければ絶対に買わない」「他店はここまで下げると言っているから、同じかそれ以下にしてほしい」など、根拠が不明確な要求は通りにくく、関係を悪化させる原因にもなります。
交渉はあくまで双方が歩み寄るプロセスであると理解し、相手が飲みやすい形で相談することが、嫌われない交渉術の鍵といえます。
購入後・点検時に嫌われる行動と注意点
ディーラーとの関係は、契約して終わりではありません。むしろ、購入後の点検や車検、トラブル対応など、長期にわたる付き合いがスタートします。
ところが、購入後のふるまいによって、せっかく築いた信頼を損ねてしまうケースも少なくありません。
この章では、アフターサービスの現場で嫌われやすい行動と、その背景にある考え方を整理します。
点検や修理の際にも良好な関係を維持できれば、安心してクルマを任せられるパートナーとしてディーラーを活用しやすくなります。
保証範囲外の要求や過剰なクレーム
メーカー保証やディーラー保証には、明確な適用範囲と期限があります。経年劣化や消耗部品の交換、ユーザー側の使用状況に起因する不具合などは、原則として有償対応になることが多いです。
それにもかかわらず、「買ってからまだ数年しか経っていないから無償にしてほしい」「他メーカーの車ではこんな故障は起きなかった」などと、保証範囲を超えた無償修理を強く求めると、対応が難しくなります。
明らかに不自然な故障やリコールの可能性が疑われる場合は、ディーラー側もメーカーと連携して調査を行いますが、全てのトラブルが無償になるわけではありません。
納得がいかない点がある場合も、まずは保証内容や技術的な説明を冷静に聞き、そのうえで必要に応じて相談や要望を伝える姿勢が望まれます。
予約なしの飛び込み入庫や過度な急ぎ依頼
最近のディーラーは、工場の入庫枠や整備士の人員配置を予約ベースで管理していることが多く、当日の飛び込み入庫には対応しきれないことがあります。
にもかかわらず、「今からすぐに見てほしい」「今日中に仕上げてほしい」と強く求めると、ほかの予約客との調整が難しくなり、スタッフの負担も大きくなります。
緊急性の高いトラブルが発生した場合でも、事前に電話で症状と状況を伝え、受け入れ可能かどうか確認するのが基本です。
また、車検や法定点検は、期限を把握していれば計画的に予約できるものですから、ギリギリになってから「何とか今日中に」と依頼するのは避けたほうがよいでしょう。
社外品や改造をめぐるトラブル
近年は、ネット通販や専門ショップで購入した社外パーツの装着やカスタマイズも一般的になっています。
一方で、社外品パーツが原因で電装トラブルや不具合が起きた場合、ディーラーとしては保証対応が難しく、診断にも時間がかかることがあります。
その際、「純正より性能が良いはずなのに」「自分で調べたが原因が分からないので全部見てほしい」といった要求をされると、現場としては対応に苦慮します。
カスタムや社外品を使用している場合は、その情報を正直に共有し、保証や修理の範囲が変わりうることを理解したうえで相談することが大切です。
ディーラーに好かれる客になるためのポイント
ここまで嫌われる客の特徴を中心に見てきましたが、視点を変えれば、ディーラーに好かれる客になるためのヒントが見えてきます。
好かれる客というのは、決してお金を多く使う人だけを指すわけではありません。むしろ、コミュニケーションがスムーズで、約束を守り、互いに信頼できる関係を築ける人が、結果として優先してもらいやすくなります。
この章では、ディーラーと長く良い付き合いを続けるための具体的な行動と考え方を整理します。
小さな配慮の積み重ねが、カーライフ全体の安心感や満足度を高めることにつながります。
感謝と信頼をベースにしたコミュニケーション
ディーラーのスタッフも一人の人間です。
丁寧なあいさつや、説明に対する「分かりました、ありがとうございます」といった一言により、「このお客さまのために頑張ろう」という気持ちが自然と生まれます。
トラブル対応の場面でも、最初に「忙しいところ申し訳ありません」と前置きしたうえで状況を説明すると、相手も真摯に耳を傾けてくれやすくなります。
また、納車時や点検後にお礼の言葉をかける、良い対応をしてもらったと感じたら店舗アンケートで評価を伝えるなど、感謝を可視化する行動は、担当者との信頼関係を強固にします。
情報収集と相談のバランスを取る
インターネットで事前に情報収集をしておくことは非常に有効ですが、その情報を絶対視しすぎると、現場とのギャップが生じます。
調べた内容と違う点があった場合でも、「自分が見た情報ではこうなっていたのですが、何が違うのでしょうか」と、確認するスタンスで質問することが重要です。
また、分からない点や不安な点は、遠慮せずに相談する一方で、最終的には専門家であるディーラーの説明を尊重し、判断材料として取り入れる柔軟さも求められます。
このように、自己判断とプロへの信頼のバランスを取れるお客さまは、ディーラー側から見ても非常に付き合いやすい存在になります。
長期的な付き合いを前提にする
クルマの購入はゴールではなく、スタートです。
点検、車検、消耗品交換、そして数年後の乗り換えまでを見据えた長い付き合いを前提に考えると、一度の値引き額よりも、トータルでのサポート品質が重要になります。
ディーラーにとっても、継続的に利用してくれるお客さまほど大切な存在ですから、急なトラブル時のフォローや、モデルチェンジ情報の提供などで手厚くサポートしやすくなります。
その意味でも、短期的な得だけを追い求めるのではなく、「この店舗と長く付き合っていきたい」という意思を伝えることが、好かれる客への近道といえるでしょう。
ディーラーと上手に付き合うための実践テクニック
最後に、具体的な場面ごとに、ディーラーとの付き合い方の実践テクニックをまとめます。
商談の進め方から、点検時のやりとり、トラブル発生時の対応まで、少し意識するだけで印象が大きく変わるポイントを整理しました。
どれも特別なことではありませんが、実際に実践している人は意外と多くありません。
小さな行動の違いが、ディーラーから見た優先度や、提案の質に影響してくることを踏まえながら、自分のスタイルに取り入れてみてください。
初回来店時に伝えておきたい情報
初めてディーラーを訪れる際は、以下の情報を簡潔に伝えると、その後の商談がスムーズに進みます。
- 現在乗っているクルマの有無と使用状況
- 家族構成や主な利用シーン
- 予算の目安と検討している購入時期
- 必ず欲しい装備や優先したいポイント
これらを共有することで、営業スタッフは不要な提案を省き、あなたに合った車種やグレードに絞り込んだ説明ができるようになります。
また、「ほかのメーカーも含めて比較検討している」「すぐには決められないが、真剣に検討している」といった本音も正直に伝えて問題ありません。
むしろ、検討状況を共有してもらえたほうが、ディーラーとしても無理のないペースで提案がしやすくなります。
商談から契約までのスマートな進め方
商談をスムーズに進めるためには、各回ごとに「今日のゴール」を意識することが有効です。
初回は情報収集と試乗、2回目はグレードとオプションの決定、3回目で最終見積もりと支払方法の確定、そして契約というように、段階を区切ると双方の負担が軽くなります。
そのうえで、値引き交渉や条件の相談は、最終見積もりが出る段階で集中的に行うと、話が整理しやすくなります。
また、契約前に迷っている点や不安な点があれば遠慮なく洗い出し、契約書にサインする前に解消しておきましょう。後からの条件変更は、どうしてもトラブルの元になりやすいため、双方にとって負担になります。
点検・車検・トラブル時の上手な頼り方
点検や車検では、事前に気になっている症状や確認したいポイントを書き出しておき、受付時にまとめて伝えると漏れがありません。
また、作業時間の目安や代車の有無、費用の概算なども最初に確認しておくことで、当日のギャップを減らせます。
トラブル発生時には、症状が起きた状況や頻度、メーター表示の有無など、客観的な情報をできる限り詳しく伝えることが重要です。
感情的な表現を減らし、事実ベースで共有することで、サービス側も原因特定と適切な対応プランの提案がしやすくなります。その結果、解決までの時間短縮にもつながります。
まとめ
ディーラーに嫌われる客と好かれる客の違いは、特別なテクニックの有無ではなく、相手の立場を想像できるかどうかに集約されます。
過度な値引き要求や冷やかしと誤解される行動、高圧的な態度、約束を守らないといった行為は、どの業界でも敬遠されるものです。
一方で、感謝と信頼をベースにコミュニケーションを取り、情報収集と相談のバランスを意識し、長期的な付き合いを前提にした行動ができるお客さまは、自然とディーラーから大切にされます。
クルマは購入後のサポートが何より重要な商品です。嫌われる客の特徴を反面教師としながら、信頼されるパートナーとしてディーラーと付き合うことで、安心で快適なカーライフを手に入れてください。