低速で走行中にブレーキをかけると「コトコト」と音がする現象は、多くのドライバーが経験する異音トラブルです。このような音は原因が複数考えられ、車の種類や状況によって理由もさまざまです。本記事では、最新の情報を基にコトコト音の主な原因と点検方法、対策を詳しく解説します。車両の安全性にも関わるため、異音が発生した際の適切な対応についても合わせて知っておきましょう。
目次
低速でブレーキをかけた際にコトコト音がする原因
ブレーキ時のコトコト音の主な原因として、ブレーキ本体だけでなく足回りの各部品の不具合が考えられます。まずは代表的な部位や症状を整理しましょう。
ホイールハブのサビや緩み
ホイールハブとブレーキローターの接触面にサビが生じると、ローターとホイールとの密着が弱まり、わずかなガタつきが生じます。特に青空駐車など湿気がある環境ではハブ部分が錆びやすく、低速でタイヤが回転するたびにコトコトと異音が発生しやすくなります。これはホイール取付部の設置面積が不均一になり、ローターの振動が音となって現れるためです。
対処法としては、ホイールを取り外してハブ部分とローター接触面を清掃することが有効です。ワイヤーブラシやサビ取り材を使い、サビや汚れをしっかり落として接触面を平滑にしましょう。これにより音が軽減することが多いです。専門店ではハブコーティングなどの処置も行われますが、DIYでの清掃でも効果が期待できます。
ブレーキパッド・キャリパー部品の緩みや摩耗
ブレーキパッドとキャリパーを固定するハードウェア(ガイドピン、保持クリップ、シムなど)が緩んでいたり摩耗していたりすると、パッドがフリーになりやすく、軽いブレーキ操作でコトコトと鳴ることがあります。また、パッド自体が摩耗して金属部が当たっている場合も異音の原因になります。こうした部品の不具合によって、停車時の振動や低速時のブレーキ操作でパッドが揺れて音が出ます。
点検ではパッド周辺を観察し、ピンやスライドピンにグリスが十分に塗られているか、パッドクリップやシムが正常かを確認します。スライドピンのグリス切れがあるとピンが固着し、パッドが引っかかって異音を起こすことがあります。解決策としては、クリップやピンの増し締め、部品交換、スライドピンへのグリスアップが挙げられます。特に古くなったブレーキパッドを交換する際には、キャリパー周りも同時に清掃・給脂するのが効果的です。
キャリパーのスライドピンの固着
キャリパー内のスライドピンが固着すると、パッドが正常に動かずに不規則な接触音が生じることがあります。固着によってブレーキの効きにムラが出るだけでなく、回転するたびに「コトコト」といった音が聞こえる場合があります。特に多走行車やメンテ不足の車両で発生しやすく、ホイールの取り外し時にピンの動きを確認しましょう。
スライドピンの対策としては、固着しているピンを専用のクリーナーで清掃し、新たに耐熱グリスを塗布してから組み立て直します。ピンに錆びや汚れが付着している場合は、ワイヤーブラシで除去後にシリコングリスなどで潤滑することで滑りがよくなり、異音が解消されます。グリスアップだけで改善しない場合は、ピンそのものの交換も検討しましょう。
ディスクローター・パッドの損傷
ディスクローターがゆがんでいたり、表面に大きな傷や段差ができていると、パッドとの接触時に異音を生じることがあります。この異音は一般に「ガシャガシャ」や「カタカタ」と表現されますが、低速走行時には「コトコト」と感じることがあります。ローターの偏磨耗やパッドの欠片混入、ローター裏面のホコリ溜まりなどが原因です。また、パッドにヒビ割れや欠けがある場合、走行中に振動して音が出ることもあります。
チェック方法は、車輪を外してローターの状態を確認することです。ローターが錆び付いて極端に摩耗している場合や厚みが足りない場合は交換タイミングです。軽度のゆがみなら研磨(フラッシング)で直せますが、広範なダメージがある場合はローターの新品交換が無難です。パッドも合わせて点検し、摩耗が進んでいれば交換しておくと再発防止になります。
サスペンション・足回り系の問題
ブレーキを踏むと車体が前後に沈む力がかかるため、サスペンションやステアリングリンク、タイロッド、スタビライザーなどの足回り部品が緩んでいたり摩耗していたりすると、ブレーキ操作時の挙動でコトコトと音が出ることがあります。例えば、コイルスプリングの緩み、ショックアブソーバーの劣化、ボールジョイントのガタ、スタビライザーリンクのガタ付きなどが該当します。これらの部品は、路面の凹凸やステアリング操作によっても音が出るため、ブレーキを踏んだときに余計に響くことがあります。
足回りからの異音を疑う場合は、リフトアップしてタイヤをグラグラしてみたり、振動させながら観察したりします。スタビリンクにガタがないか、ブーツが破れたままになっていないかを点検しましょう。不具合が見つかった場合は該当部品を交換する必要があります。また、足回り全体を定期点検しているディーラーや専門店に依頼し、異常がないかチェックしてもらうのも安心です。
コトコト音が発生する主な状況や特徴
コトコト音はいつ、どの状況で発生しやすいかを把握しておくことも重要です。以下のような状況や特徴があるときは、特に警戒しましょう。
低速走行時のブレーキ操作
「低速でコトコト音がする」という現象そのものです。具体的には、信号待ちや駐車時など時速10〜30km/hくらいで徐々に減速するときに出やすい音です。アクセルを踏んで加速時には音が出ず、ブレーキ入力を開始すると音がしだし、ブレーキを離して完全に停止するか準停止すると音が止まるといったケースが多いです。これはパッドやディスクが完全にコンタクトする前後の微妙な摩擦のズレが原因です。
また、ブレーキを強く踏んだときには音が消え、軽く踏むと音が大きくなるという特徴もあります。強いブレーキではパッドが強く押さえつけられるため余計な動きが少なく音が収まり、逆に緩い力ではパッドが動きやすく揺れて音が出やすくなります。このような傾向があるかどうかもチェックポイントです。
走行中と停車直後の違い
走行中に発生するコトコト音は、停車直前にピークを迎えて止まるというパターンが典型的です。車両が完全停止してエアコン停止など静かになると音も消えたり、非常に小さくなったりします。また、エンジンの回転が高い(高速走行時)には聞こえないものが、低速でエンジン回転が落ちると聞こえ出すことがあります。これはエンジンやロードノイズにかき消されていた小さな異音が、低速で目立つようになっているためです。
停車中にブレーキペダルをずっと踏んでいるとき(ホールド時)には音が出なかったり、パーキングからドライブに入れ替えた瞬間だけコトコト音がするケースも報告されています。これはブレーキシステムの内部圧力の変化による微小な動きが音となる場合がありますが、通常ブレーキの停止時だけに起きる音であれば大きな故障の前兆でないことが多いです。
車種や環境による違い
同じ低速ブレーキ時の異音でも、車種固有のパーツ形状や使用環境によって感じ方が異なる場合があります。例えば、ハイブリッド車やEVでは回生ブレーキが作動するため通常車よりもブレーキパッドの稼働幅が少なくなることがあります。このため、より繊細な摩擦音が出やすいともいわれます。一方、古い車ではサスペンションやマウントゴムの経年劣化から異音が起こりやすい傾向があるため、年式によって原因の割合も変わります。
さらに、気温や路面の状況も影響します。雨上がりの湿った路面や冬季凍結防止剤の塩カルで錆が発生しやすい環境では、ハブのサビによる異音が増える傾向があります。また、舗装の悪い道路で段差や凸凹を頻繁に通ると足回りへの負担が増え、緩みガタが出やすくなります。こうした外部要因にも注意し、異音の発生頻度やタイミングを覚えておくと原因特定の手掛かりになります。
コトコト音以外の異音との違い
「コトコト音」と似たようなブレーキや足回りの異音には、発生状況や音色に違いがあります。異音の種類と主な特徴を以下にまとめ、聞き分けの参考にしましょう。
異音の種類 | 発生シーン | 考えられる原因 |
---|---|---|
コトコト音 | 低速走行時にブレーキを踏むと発生、停止直前に大きくなる | ホイールハブのサビやパッドのガタつき、キャリパーピン固着など |
キーキー音(鳴き) | ブレーキを踏んだときに甲高い持続音 | パッドの摩耗、表面の異物、鳴き現象(パッドとローター間の高周波振動) |
ガタガタ音 | 走行中の路面の凹凸で発生、低速幅で聞こえやすい | サスペンションの緩み、ボールジョイント・リンク類の劣化、ブレーキ部品のゆるみ |
カンカン音 | ブレーキ操作時・強く踏んだ時に金属音 | ローター裏側のシールドやヒートシールドが外れて当たる、パッドのバックプレート接触 |
表のように、それぞれ音の発生タイミングや音質が異なります。キーキー音は高音、ガタガタ音は軽い衝撃音、カンカン音は金属が当たる硬い音です。コトコト音はこれらとは違い、低速での振動伴うやや遅いリズムの音が特徴です。聞き分けることで異常箇所の推定に役立ちます。
コトコト音の点検と診断方法
異音が発生したら、まずは安全な場所で走行を控え、音の原因を調べましょう。点検の流れとしては以下のような手順があります。
- 音の発生条件を再現確認:予測通り低速・緩いブレーキで確実に音が出るか確認します。
- 視覚・聴覚によるチェック:車両を停止させ、エンジン停止後にブレーキを踏んだままボディを軽く叩きながら音の有無を探ります。
- ホイールの脱着点検:安全ジャッキアップして車輪を外し、ハブ部・ローター表裏・ブレーキパッド周辺を点検します。錆びや汚れ、摩耗の度合いを確認します。
- 足回りの確認:リフトアップ時にタイヤを揺さぶり、タイヤとサスペンションのガタがないか調べます。緩みや損傷がないか点検します。
自己診断でわからない場合や不安がある場合は、専門の整備工場やディーラーに相談しましょう。プロによる点検では、試乗やロードテスト、専用ツールでの部品測定により原因箇所を特定できます。ブレーキ系・足回り系どちらにも精通した整備士に確認してもらうと安心です。
なお、ブレーキ異音の場合は早めに原因を特定して対策することが重要です。特にパッド残量が少なくなっている場合やブレーキの利きに違和感があるときは、すぐに調整や交換を行いましょう。異音発生時には優先的にホイールナットの締め付け確認や、ホイールのゆるみのチェックも忘れずに行い、安全な状態を保ってください。
コトコト音の解消・対策方法
原因が判明したら、それぞれに応じた対策を実施します。効果的な対処法をいくつかピックアップします。
- ホイールハブのクリーニング・サビ取り:ホイールを外した状態で、ハブとホイール取付面の錆びや汚れをワイヤーブラシなどで丁寧に落とします。サビがひどい場合はサビ取り剤を使用し、水で洗い流してから乾燥させましょう。
- パッド・キャリパー部品の点検・整備:パッドのガタツキが見られる場合は、パッドガイドクリップの交換や不足しているシム・クリップを付け直します。キャリパースライドピンにグリスが不足している場合は、古いグリスを落としてから専用グリスを塗布します。パッドの裏側(バックプレート)に耐熱グリスを薄く塗ることで振動が減ります。
- ローター・パッドの交換・整備:ローターにワダチや歪みがある場合は、再研磨や新品交換を行います。また、パッドが極端に摩耗していると接触不良が起こりやすいため、残量に余裕がなくなっていれば新品パッドを装着します。
- 足回り部品の交換・補強:スタビライザーリンクやショックアブソーバー、ブッシュ類に緩みや劣化が見つかった場合は交換します。また、ブレーキ周辺以外の足回り部品もメーカー指定の規定トルクで締め直すことで、緩みによる異音を防げます。
- 定期点検とメンテナンス:長期間放置しないよう1年または1万kmごとに車検や定期点検を受け、ブレーキや足回りをチェックします。日常的にブレーキフルードやパッド残量を確認し、劣化が進む前に交換することがコトコト音の予防につながります。
これらの対処は、整備環境がない場合でも比較的自分で行えるものも多いですが、不安があればプロに任せるのが安全です。早めに点検・整備することで不快音が解消され、車両の寿命や安全性も高められます。
コトコト音がもたらす安全性への影響
コトコト音自体が直ちにブレーキ性能を大きく損なうわけではありませんが、他の異常のサインである可能性を無視しないことが重要です。以下の点に注意しましょう。
ブレーキ性能への影響
音の原因がパッドのガタつきやディスクの状態であれば、重大な事故には直結しにくいケースもあります。しかし、ローターの亀裂やパッドの脱落、キャリパー固着など、まれにブレーキ機能に影響を与える不具合が隠れている場合もあります。異音だけでなく、ブレーキの効きに違和感がないか、ペダルの踏み心地に変化がないかも同時に確認しましょう。
また、ブレーキを踏むとき以外にも異常音が増える場合は、足回り全体の問題につながることがあります。タイヤが脱落したり、サスペンションが破損したりすると重大事故に至るリスクが高まるため、異音を聞いたら安全なうちに早期点検することが推奨されます。
早めの点検が必要なケース
次のようなケースでは、できるだけ早く専門家による点検・修理を受けてください:
・音が徐々に大きくなっている、あるいは頻度が増えている
・ブレーキペダルの踏み込み深さや制動距離に変化がある
・ポンポンという衝撃音や大きな金属音が伴う
・タイヤ交換や車検直後に音が出始めた
これらの場合は、単なる軽微な異音以上の問題の可能性が高いため、直近で整備を受けましょう。
一方で、当座走行に支障なく音量も小さい場合でも、「後で直そう」ではなく計画的に整備日程を組むことが大事です。安全運転のためにも、早めに原因を除去し異音のない状態を維持することが車の寿命や乗員の安心につながります。
まとめ
低速時にブレーキを踏んだときに聞こえるコトコト音は、ホイールハブのサビやブレーキパッドの緩み、キャリパーの固着などいくつかの原因が考えられます。発生する状況や音の特徴をよく観察し、原因に応じた対策(サビ落とし、グリスアップ、部品交換など)を行えば多くの場合解消可能です。音が安全性に直結する可能性もあるため、気付いたら早めに点検・整備しましょう。適切なメンテナンスを続ければ異音を未然に防ぐことができ、快適で安全なドライブが実現できます。