運転中にハンドルを切るたびに「ギギギ」という異音がすると不安になりますよね。こうした異音は車のステアリングやサスペンションの不具合が原因の可能性があります。放置すると大きな故障につながる恐れがあるため、迅速な原因特定と対処が重要です。本記事では主に「ハンドルを切るときに生じるギギギ音の原因」「異音が発生した際に確認すべきポイント」「部品別の修理方法や費用目安」「異音を放置した場合のリスク」「予防メンテナンス方法」について詳しく解説します。適切な情報を得て、大切な愛車の安全と安心を守りましょう。
目次
ハンドルを切ると『ギギギ』と異音がする原因と対策
ハンドルを切る際に発生する「ギギギ」という異音は、車のステアリング系統や足まわりの複数の部品が摩耗・劣化しているサインです。例えばステアリングシャフトのジョイント部やサスペンション系、タイロッドエンド、あるいはパワーステアリング系統など、原因となる箇所は様々です。状況を放置するとさらなる故障や事故の危険性が増すため、早めの点検・整備が必要です。
以下では主に考えられる原因を具体的に紹介し、それぞれの対策方法についても解説します。それぞれの部品の特性や必要な処置を押さえて、異音の原因を突き止める参考にしてください。
ステアリングシャフトジョイントやブーツの潤滑不足
ハンドルとステアリングギアをつなぐシャフトにはジョイント部があります。この部分はブーツで覆われ、中にグリース(潤滑剤)が封入されています。長期間の使用や経年劣化でブーツに亀裂が入ったりグリースが劣化すると、金属部同士が接触しやすくなり「ギギギ」という擦れ音が発生します。
対策としては、まずジョイント部のブーツを点検し、損傷があれば交換する必要があります。軽度であれば専用のグリースを補充するだけで解消する場合もありますが、多くはブーツ自体の交換が必要となります。交換費用は部品代と工賃を含めてもそれほど高額ではなく、数千円〜数万円程度が一般的です。DIYで対応する場合は、適合するグリースとブーツキットを用意し、ブーツを外して内部のジョイントに確実に潤滑剤を塗布してから組み直します。
タイロッドエンドやボールジョイントの摩耗
タイロッドエンドやボールジョイントは、ステアリングギアからタイヤに動力を伝える重要な部品です。これらのジョイントもグリースで潤滑されていますが、ブーツ破れや経年劣化でグリースが抜けると摩耗が進みます。摩耗が進むと部品同士が金属接触するため、ハンドルを切る度に「ギギギ」や「ゴツゴツ」という異音が発生することがあります。
こうした場合はタイロッドエンドやボールジョイントの交換が必要です。交換費用は車種や部品によりますが、一般的には部品代と工賃を合わせて1万円~3万円程度が目安となります。DIYでの対応は専門性が高いため難度が高く、通常は専門の整備工場での修理をお勧めします。
サスペンション部品(ストラットアッパーマウントなど)の異常
サスペンションのストラット(ショックアブソーバー)上部にあるアッパーマウントや、コイルスプリングの緩み、サスペンションブッシュの劣化も、ハンドル操作時の異音原因になります。ストラットアッパーマウントにはベアリングが内蔵されており、これが摩耗するとハンドルを切るときにゴキゴキ音やギギギ音が生じることがあります。また、スプリングが錆びついている場合も類似の金属音が発生します。
これらの問題には専門的な見極めが必要となります。劣化が目立つ場合、アッパーマウントやショックアブソーバー自体の交換が必要です。交換にはサスペンションを分解する必要があるため、工賃は比較的高くなります(1本あたり1万5千~3万円程度が一般的です)。ただし、異常を放置すると乗り心地の悪化や重大事故につながる恐れがあるため、異音がする場合は早めに整備工場で点検を受けましょう。
パワーステアリングシステムのトラブル(オイル漏れなど)
油圧式パワーステアリング車では、ハンドル操作時に「ウィーン」「ギギギ」といった音がすることがあります。これはパワーステアリングオイルの不足や漏れが原因でポンプが異常回転しているためです。オイル量は通常は減ることはないため、減っている場合はどこかで漏れている可能性が高いです。オイルが不足するとギアが硬直し、結果的に異音が発生します。
対応策としては、まずリザーバータンクでオイル量を点検し、指定量まで補充します。ただしオイル漏れを伴う場合は、ホースやシールの交換が必要です。また近年は電動パワステが普及しており、電動式では油圧オイルが使われないためこの音は発生しません。ハイブリッド車や一部のEVなどではパワーステアリングポンプ自体がないため、こうした場合はパワステ系ではなく他の部分を重点的に点検してください。
異音発生時にまず確認すべきポイント

異音が聞こえたときは慌てずに下記のポイントを順に確認してみましょう。事故や大きな故障になる前に簡単なチェックが不具合発見につながる場合があります。
早めの確認で小さなトラブルのうちに対処すれば、高額な修理を避けることができます。まずは以下の点を確認し、安全運転ができる状態かどうかを把握しましょう。
タイヤの空気圧と摩耗状態の確認
タイヤの空気圧が低下しているとハンドルが重くなり、異音の原因になります。またタイヤの摩耗や偏摩耗があると、ハンドル切ったときにタイヤと路面の接触音として「ゴロゴロ」や「ギギギ」という音がする場合があります。そのほかにもタイヤに小石などの異物が挟まっているときにも異音が発生することがあります。
したがって、まずはタイヤのエアゲージを使って空気圧を適正値に調整し、トレッドの状態や異物の有無を目視で確認しましょう。異常があればすぐに修理または交換を検討します。
ステアリング機構(ジョイント・ブーツ)の点検
次にステアリング系のジョイント部やブーツの状態を確認します。ボンネットを開けた状態で、ステアリングシャフトやラック&ピニオンギヤボックス周辺を観察し、ブーツに亀裂やグリース漏れがないかチェックします。また、ハンドルを切ったまま車両を上下に動かし、異常な遊びや金属同士が接触する感触がないか確かめる方法もあります。
異常が見つかった場合、その部品のグリース補充や交換が必要です。整備工場での点検も併用し、専門家に詳しく診断してもらうのが安心です。
パワーステアリング液の残量確認
油圧式パワーステアリング車の場合、ボンネット内のリザーバータンクでパワステオイルの量を点検します。規定量より低い場合はオイル不足が音の原因になっている可能性があります。オイルが減っていれば蛍光ペレット漏れなど、漏れ箇所の特定も必要になります。
不足している場合は指定されたオイルを補充してから、オイル漏れがないかしばらく様子を見ましょう。その際、オイルが漏れていないかリザーバータンク下部やホース周りを点検し、必要に応じて修理してください。
異音の原因となる主な部品と修理方法

ここでは異音を発生させる可能性のある部品別に、詳しい原因と対処法を挙げていきます。先に挙げた部品のほか、ホイールや車軸まわりなども含めて原因を知らべ、必要な修理を見極める参考にしてください。
異音の種類によっては聞こえる場所やタイミングが異なるため、発生条件を踏まえて原因部位を絞り込みましょう。以下の項目を順に確認すると、問題箇所の特定につながりやすくなります。
ステアリングギアボックス(ラック&ピニオン)の異常
ステアリングギアボックスが摩耗したり油漏れを起こしたりすると、ハンドル切る際に骨伝いに異音が伝わってきます。特に漏れたオイルが他の部品に付着すると異音がさらに増幅することがあります。ラック&ピニオン式ステアリングの場合、ギア内部にゴミが入ってしまったときにも「ギコギコ」といった異音が出ることがあります。
異常を疑う場合は工場でギアボックスを点検します。ギアそのものの交換やシール交換、オイル補充などで対応することになります。費用は部品代と工賃を含めて数万円になる場合が多いですが、操作性に直結する部分ですので、異音が出たら早めにプロに診断してもらいましょう。
サスペンション(ストラットアッパーマウントなど)の損傷
ランプ状のコイルスプリングやストラットの上部にあるアッパーマウントは、ハンドル操作時にナックルが回転するときの支持点になります。ここが摩耗すると回転時に金属同士が擦れる音が出ます。特に、アッパーマウントのベアリングが劣化すると、駐車時にハンドルを切っただけでも「キシキシ」「ギシギシ」と金属音が生じます。
この場合はサスペンションアッパーマウントの交換が必要です。同時にショックアブソーバーのオーバーホールやコイルスプリングのチェックも行います。交換には工具と作業時間が必要となるため、工賃を含めて1本あたり1万5千円以上かかることが一般的です。
タイヤハブ・ホイールベアリングの摩耗
ホイールベアリングが損傷すると、高速走行時に「ゴーッ」という振動音が大きくなりやすいですが、大舵角での低速コーナー中に金属音が混じって聞こえる場合もあります。ベアリングの摩耗はハンドル操作時に左右で挙動が変わることで気づくケースが多く、放置すると最終的に車輪が固着してしまう恐れがあります。
修理としてはベアリングの交換が必要です。多くの場合ハブごとの交換になるため、部品代と工賃は高めで、1輪あたり数万円に及ぶことがあります。しかし安全上致命的な故障につながるため、ハブベアリングからの異音が疑われる場合は速やかに整備を行いましょう。
パワーステアリング系統(ポンプ・フルード)の問題
前述のとおり、油圧式パワーステアリング車の場合はオイル不足が主な原因です。オイル量不足以外にも、油圧ポンプ自体の劣化やプーリーのベルト緩みでも「キーキー」や「ギギギ」とした音が発生します。電動パワステ車ではこの音は発生しませんが、油圧式の場合は欠かせない確認項目です。
まずはフルード量を点検し、不足があれば補充します。ポンプやホースに異常があれば交換が必要です。フルードの補充は1,000~2,000円程度で済みますが、ポンプ交換となると部品代数万円+工賃がかかり、高額になります。定期的なチェックと早期対応で、コスト高騰を防ぎましょう。
その他の要因(ブレーキ・エンジンマウントなど)
上記以外にも、異音の原因に繋がるパーツは多岐にわたります。例えば、ブレーキキャリパーやブレーキパッドが固着するとブレーキディスクとの接触音が出る場合がありますが、これはハンドル操作時よりもブレーキ操作時に顕著です。また、エンジンマウントが劣化すると急加減速時にカタカタ音がすることがあります。ただしこれらは「ハンドルを切る」以外の条件で起こることが多いため、聞こえ方に注意して切り分けが必要です。
いずれの場合も確実に原因を特定するにはプロによる点検が有効です。異音発生時は当てずっぽうな部品交換を避け、整備工場での診断を受けることで無駄な修理を防ぎましょう。
修理費用の目安と比較
異音の原因となる部品交換にかかる費用は内容によって大きく異なります。目安として一般的な修理ケースの費用を把握しておくと、見積もりを依頼する際の参考になります。以下に代表的な部品の交換費用例を示します。
部品・作業内容 | 費用の目安 |
---|---|
ステアリングシャフトジョイント部のグリス補充・ブーツ交換 | 部品+工賃で約3,000~6,000円 |
タイロッドエンド交換 | 約10,000~20,000円 |
ボールジョイント交換 | 約10,000~20,000円 |
ストラットアッパーマウント交換 | 約15,000~30,000円/本 |
パワーステアリングポンプ交換 | 約20,000~50,000円 |
パワステフルード補充 | 約1,000~2,000円 |
ハブベアリング交換 | 数万円/輪 |
上表はあくまで一般的な目安です。国産車か輸入車か、作業工賃の地域差、車種の違いなどで大きく変動します。費用を抑えるためには、複数の整備工場で見積もりを比較したり、必要な部品のみを交換するように依頼するとよいでしょう。
修理費用を抑えるポイント
異音対策にかかる費用を抑えたい場合、以下の方法が考えられます。まず、自分でできる範囲をおこなっておくことが有効です。例えばパワステフルードは自宅でも補充可能な簡単な作業ですし、ブーツの割れ箇所に応急的に耐久テープを巻くなどの一時的処置も状況に応じて行えます。
また、整備工場へ依頼する際には必要最低限の修理内容で見積もりを取ります。部品交換による完璧な修理が理想ですが、予算に制限がある場合は「今回は異音の出ている箇所のみ」、「グリスアップ等の簡易対処のみ」といった範囲を指定することで費用を抑えることができます。事前に可能な限り自分で点検を行い、専門家と要点を共有することで無駄な作業を減らせます。
異音を放置したときのリスク

ハンドル操作時の異音を放置すると、車両の安全性に大きな影響を及ぼす可能性があります。ごく小さな音に見えても、部品の摩耗や緩みが進行することで走行中に突然故障が起きるリスクがあります。特にステアリング・足まわりは車の操縦に直結するため、安全が確保できなくなってしまいます。
以下に主なリスクを挙げますので、異音が発生したら早めに点検・修理することを強くおすすめします。
【リスク例】
タイロッドエンドやボールジョイントの破損→ハンドル操作不能で走行不能になる、または方向制御できず事故につながる。
パワーステアリングオイル漏れ→ポンプ焼き付きで操舵困難に、場合によっては動力不足で車輪が動かなくなる。
ストラットやアッパーマウントの破損→サスペンションが支えられず走行不能、他部品への二次被害発生。
安全性低下・重大事故の危険
異音がするということは対象部品にすでに摩耗や亀裂が入っている状態です。例えばタイロッドエンドが折れた場合、ハンドルの操作が完全に失われる可能性があります。また、足まわりが不安定になると車が暴れたり曲がれなくなったりするため、ハンドルが効かないうちに重大事故に繋がる危険があります。安全確保の観点から、異音に気付いたら速やかに走行を中止し、プロの点検・修理を受けるべきです。
更なる故障・修理費用増加のおそれ
問題を放置すると摩耗箇所が広がり、修理範囲が大きくなる恐れがあります。例えばブーツに亀裂があるとき油脂補充だけで済めば費用は小さく済みますが、そのまま乗り続けると周辺部品が痛み、交換範囲が増えて費用が跳ね上がります。結果として数万円で済んだはずが数十万円になることも考えられます。
また、異音発生の一因である部品が連鎖的に壊れると、最悪の場合はドライブシャフトやサスペンション全体の交換になることもあります。コスト面でも安全面でも損をしないために、異音発生時は早めに修理するのが賢明です。
異音を予防するメンテナンス方法
異音を未然に防ぐためには、日頃から定期的なメンテナンスと点検を欠かさないことが重要です。以下のようなポイントを習慣化することで、ステアリングやサスペンション部品のトラブルを早期に発見できます。
特に古い車や走行距離の多い車は消耗が進んでいるため定期点検を厳密に行い、新品交換の目安時期が過ぎたら躊躇せずに交換しましょう。
- ステアリング系の潤滑とオイル点検:ステアリングシャフトやタイロッドのブーツ切れ、パワステオイルの量は定期的にチェック。必要に応じてグリースアップやフルード補充を行います。
- ブーツ・ベアリングの点検:タイロッドエンドやサスペンションアッパーマウントのゴムブーツ、ベアリング部に亀裂やグリース漏れがないか確認。早めに補修・交換することで異音を防ぎます。
- タイヤとサスペンションのチェック:タイヤの空気圧を常に適正に保ち、トレッド摩耗を均等にします。サスペンション系部品(ショックアブソーバー、コイルスプリング、アッパーマウントなど)の状態も定期点検し、異常があれば交換します。
また、運転環境や走行スタイルも異音予防のポイントです。細かい段差や悪路でのハンドル操作時は負担が大きくなるため、丁寧な運転を心掛けましょう。定期的にディーラーや整備工場で車全体の点検を受けることで、予期せぬトラブルの早期発見にもつながります。
まとめ
「ハンドルを切るとギギギと異音がする」場合、原因はステアリング機構や足まわりの摩耗・劣化であることがほとんどです。特にグリース不足やブーツ破れ、パワステオイルの不足などが多く、適切な点検とメンテナンスで多くのトラブルは防止・解決できます。
異音に気づいたら早めの点検が重要です。素人では発見が難しいこともあるため、信頼できる整備士に相談し、必要な部品交換や潤滑を行いましょう。また定期的なメンテナンスで部品の寿命を超える前に交換することで、安全かつ快適なドライブを維持できます。安全性と経済性を両立させるためにも、異音の発生を軽視せず早期に対処することが大切です。